• 豆知識

山で生活する人の信仰や言い伝えについて

山で生活する人々には、言い伝えや地域の神社等の伝統を大切にしています。日本人が生活の中で培ってきた伝統に触れてみてください。

山岳信仰について

日本の山岳信仰は、古くから山々に宿る神様や霊験あらたかな霊地に対して、敬意を払い、信仰を寄せる信仰のひとつです。山々は、古来より日本人にとって神聖な場所であり、山岳信仰はその山々に宿る神様や霊を崇める信仰として、広く日本の文化に根付いています。

山岳信仰の代表的な神様には、日本各地に存在する「山の神様(やまのかみさま)」があります。山の神様は、山や自然を司る神様であり、山岳信仰の中心的な存在となっています。また、山や自然を象徴する「熊野信仰」や「お山の神様」、「十二様信仰」など、地域や時代によって様々な山岳信仰が存在しています。

山岳信仰は、山岳地帯において特に強く根付いています。日本には山々が多く、その山々には多くの神様が宿っているとされており、山を崇める信仰は、古来より日本人にとって大切な文化であったと言えます。また、山岳信仰は、自然環境と共生するという、日本人独自の考え方や価値観を表しているともいわれています。

 山の神に関する言い伝え

山には神が宿ると信じられており、日本の各地には多くの山の神が祀られています。以下には、山の神に関する代表的な言い伝えをいくつか紹介します。

  1. 「山には神が宿る」 日本の古来からの信仰では、自然界には神が宿るとされています。特に、山は高くそびえる存在であり、その頂上には神が宿ると考えられてきました。このため、山は古くから信仰の対象となり、多くの神社が山中に建てられてきました。
  2. 「山の神は自然を司る」 山の神は、山の自然を司るとされています。山は自然が生み出した壮大な景観であり、自然災害や天候の変化など、多くの自然現象が起こりやすい場所でもあります。そのため、山の神は、自然を保護し、人々に平和な生活をもたらす役割を担っていると考えられています。
  3. 「山の神は厳格である」 山の神は、山そのものが厳しい環境であるため、厳格な性格を持つとされています。そのため、山に登る際には、山の神に対して敬意を払い、山の自然を大切にすることが求められます。また、自然に対して無神経な態度をとると、山の神からの厳しい試練が与えられるとも言われています。
  4. 「山の神は神秘的である」 山の神は、自然に囲まれた神秘的な場所に祀られているため、神秘的な力を持つとも言われています。また、山には霊気や気場など、人間の五感では感じられないものがあるとされており、山の神にはそのような力があると考えられています。
  5. 「山の神は人を守る」 山の神は、山に生きる動植物だけでなく、登山者や山で暮らす人々も守るとされています。山の神への信仰は、山に挑戦する人々にとって、自然災害や山岳事故から身を守るための一つの手段となってきました。

 

十二様信仰

十二様信仰は、日本の古い信仰のひとつで、特に日本の山岳地帯に伝承されている信仰です。この信仰は、山々に宿るとされる「十二柱の神様」に対しての信仰であり、これらの神々に敬意を払い、祈りを捧げることで山の神々に加護を受けることができるとされています。

具体的には、十二柱の神様にはそれぞれ名前があり、それぞれが山の特定の場所に宿っているとされています。たとえば、「菅原明神」は、京都市内にある菅原寺に祀られており、山伏たちによって祀られています。「熊野大明神」は、紀伊半島の熊野市にある熊野速玉大社に祀られており、多くの信仰を集めています。

十二様信仰は、山岳地帯に暮らす人々にとって、山を信仰する文化として、古くから根付いているものです。また、十二様信仰には、山々に暮らす動植物たちに感謝するという側面もあり、自然と共存する精神を表しているとされています。

 杣人の言い伝え

日本の伝統文化において、木を切る職人や伐採作業を行う人々は「杣人(そまびと)」と呼ばれます。杣人たちは、以下のような言い伝えを守ってきました。

  1. 木を切る前に神に祈る 木を切る前には、その木が守ってきた神様にお詫びをするために、神に祈りを捧げることがあります。また、その木を切っていいかどうかを神に問いかけることもあります。
  2. 神社のお祓いを受ける 木を切る際には、神社のお祓いを受けることがあります。このお祓いにより、木から宿っていた魂を無事に送り届け、木を切ることによって生じる悪い影響を回避することができると信じられています。
  3. 毎年、新しい斧を作る 杣人たちは、木を切る際には斧を使用します。斧は鋭利な刃を持つため、使い続けると切れ味が悪くなってしまいます。そのため、毎年新しい斧を作り、常に最高の状態で仕事を行うことが求められます。
  4. 節目ごとに祝いの行事を行う 木を切る際には、特定の節目には祝いの行事を行うことがあります。たとえば、新しい鎌を手に入れた際や、木を切り終えた際には、神社にお参りして感謝の気持ちを表します。
  5. 木の精霊に感謝する 杣人たちは、木を切ることによって得られる木材に感謝すると同時に、木に宿る精霊にも感謝の気持ちを表します。このような姿勢は、自然との共存を尊重する精神を表しています。

 斧をよきと呼ぶわけ

「斧をよきと呼ぶ」という言葉は、日本の伝統文化や風習に関する言葉の一つで、斧は木材を切り出すための道具であり、それをよく使いこなす職人や人々は重要な役割を担っていました。そのため、「斧をよき(善き)と呼ぶ」という言葉が生まれました。

この言葉には、木材を切り出すための道具である斧には、その大きさや形状、扱い方次第で、作業の効率や品質に大きな影響を与えるという意味が込められています。斧は、木材を切り出すための労働を行う人々にとって、欠かすことのできない重要な道具であったことから、その扱い方や使い方には非常に慎重な注意が払われていました。

また、「斧をよきと呼ぶ」という言葉には、職人や人々が、自分たちの仕事に真摯に向き合い、その道具に敬意を払っていたことを表しています。この言葉には、道具を大切に扱い、真剣に仕事に向き合うことが重要であるという、一種の職人魂を表す意味も込められています。

「ヨキ」には三本と四本の線が刻まれていて信仰的な意味があり、三本→「ミキ」といって「神酒」を表しています。
四本→「ヨキ」で「四気」または「四大」を表します。「四気」とは太陽・土・水・空気で木を育てる気のことです。「四大」とは地水火風のことです。

伐採する前に斧を木に立てかけて山の神様が与えた樹木を使わせて頂くことへの感謝と伐採許可や作業の安全を祈るそうです。

マタギの言い伝え

マタギとは、日本の山に住む動物を狩る狩猟民のことを指します。彼らには多くの言い伝えがありますが、代表的なものを以下に紹介します。

  1. 「山に入る前に神様に挨拶をする」 マタギは山に入る前に、山の神様に挨拶をします。彼らにとって山は生命力に満ちた神聖な場所であり、神様に感謝の気持ちを示すことが大切だとされています。
  2. 「狩りの時は動物に感謝する」 マタギは狩りをする際、必要な分だけの動物を狩るように心がけます。また、動物に感謝の気持ちを示し、生命力をもらっていることを忘れないようにしています。そのため、マタギたちは狩った動物を食べる前に必ず感謝の言葉を述べます。
  3. 「不用意な言動は禁物」 マタギは、山の動物たちとともに生きるために、自然との調和を大切にします。そのため、不用意な言動をすることは禁物であり、自然を敬い、謙虚であることが求められます。
  4. 「狩りの際は敵になる」 マタギは、山に生息する動物たちが自分たちの敵であると考えています。そのため、彼らは常に状況を見極め、自分たちの命を守るために最善を尽くします。
  5. 「山は大切な財産」 マタギたちは、山が自分たちの生活や文化に欠かせない財産であると考えています。そのため、山を守り、維持することが彼らの使命であるとされています。
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